2017年10月24日

教育連携 2015年

服部栄養専門学校 食育実習

実習目的
歯科衛生士として食教育を実践するにあたり、調理実習を通し食について考える
実施概要
咀嚼やう蝕誘発能などにかかわる食材を確認できるよう工夫をしたクリスマス料理
メニュー
1.ローストチキン
2.イカ墨リゾット
3.2色の人参のエスカベッシュ
4.ザバイオーネのエスプレッソアイス仕立て
5.栗のエスプーマ添え

【参加学生の感想(一部抜粋)】

今日の食育実習では、楽しみながら食と口腔の関係性について考えることが出来た。食べ物を摂取すること、それは口腔の状態や機能、そして全身の健康に密接に関係していて切り離すことの出来ないものである。口腔にはさまざまな役割があり咀嚼、摂食、嚥下をはじめ構音・発音や唾液の分泌、愛情・怒りなどの感情表現など、そのどれもが必要不可欠である。その中でも咀嚼・嚥下は今回の食育実習と深い関係があり、今回は実際に調理・試食をした食材やメニューを通して咀嚼・嚥下について改めて考えを深める貴重な機会となった。
今回実習を行ったメニューはローストチキン、イカスミリゾット、2色の人参のエスカベッシュ、ザバイオーネのエスプレッソアイス仕立て栗エスプーマ添えだった。メインディッシュのローストチキンは火が通っていて柔らかかったが、鶏肉特有の繊維質な食感が感じられ、前歯の歯間部に挟まりやすいような印象を受けた。歯間部は歯ブラシの毛先が届きづらく、清掃不良が生じやすい。チキンの肉片のような見えやすい食物残渣が前歯部に挟まっているような状態であれば、自発的に歯間ブラシやフロスなどを用いて清掃を行う可能性が高いが、大臼歯などに気付かないうちに残ってしまった食物残渣は、普段のブラッシングでは届きづらい上に意識して磨いても歯間隣接面に毛先を挿入することは、困難であるため蓄積されやすい。付け合わせになっていたキャロットグラッセは、グラニュー糖でよく煮込まれており、柔らかく食べやすかったため、さらに細かくすれば、高齢者でも食べやすそうであったが、フライドポテトは咀嚼すると臼歯部咬合面や隣接面などにつまりやすく、小児や高齢者にはあまり通さない印象を受けた。 食物残渣に含まれる糖分はう蝕の原因菌の気質となり、酸が産生され歯が脱灰される。食物残渣が原因となるう蝕は小児から高齢者まで共通して起こりうるため、食後は出来るだけ早く歯を磨き、食事をしていて歯間部に物が詰まりやすいような感覚がしたら歯間ブラシやフロスで重点的に清掃を行うことが理想的である。
主食のイカスミリゾットはお粥のような形状でお年寄りや小児には飲み込みやすい料理ではあるが、水分が多い分口腔停滞性が白米などに比べ比較的高いと考えられる。そして部分床義歯や全部床義歯を装着している口腔内では。粘膜と義歯の間に入り込みやすい特徴がある。たとえ歯が1本もない無歯顎の口腔内でも粘膜の清掃と、義歯の清浄は必ず行わなくてはならない。またこの料理には軸切りにされたイカが添えられていたが、イカは弾力のある食材で、軸切りにすると高齢者や小児では嚙み切って咀嚼することが難しい。リゾット自体にも小さく刻まれたイカが入っていたが、口腔機能が低下しがちな高齢者に提供するときはイカやタコなどの弾力のある食材は避けた方が良いと考えられる。
2食の人参のエスカベッシュは人参と京人参の2種類を使用した、甘酸っぱい味付けの料理だった。食材は他の料理と比べると一つひとつが細く咀嚼しやすそうだったが、試食してみて酸味の強さにむせてしまう場面もあり、大人でも好みが分かれそうな印象を受けた。むせるという現象は誤嚥に繋がりやすい。誤嚥とは本来食道を通過して消化器系に進まなくてはいけない食べ物や飲み物が、気道と食道を区別する弁の動きのわずかな遅れや誤作動により気管に入ってしまう状態のことを言い、口腔機能全般が衰えてしまう傾向にある高齢者には誤嚥性肺炎のリスクも予測出来る。現在の日本における死因の第3位に誤嚥性肺炎が挙げられており、そのほとんどが高齢者であるという事実も明らかになっている。摂食により起こるさまざまなリスクを考えて、咀嚼・嚥下までを考慮した味付けや調理を意識しなくてはならない。 ザバイオーネのエスプレッソアイス仕立て栗のエスプーマ添えは冷たいアイスと柔らかいエスプーマがメインのデザートで、食感のアクセントにヌガーが散りばめられていた。ヌガーにはアーモンドスライスや、ピスタチオが入っており、さらにグラニュー糖でコーディングされているため、比較的咀嚼に時間を要する。健全な歯が揃っていないと、嚙み砕いて細かくするのは難しいと考えられる。またアーモンドなどのナッツ類は栄養価が高く、小児が好むチョコレートや焼き菓子などに入っていることも多いが、歯間部に入り込みやすく、カリエスリスクを高める可能性がある食材である。高齢者では咀嚼することが困難な場合もあるため、噛み応えがあるナッツ類は避けた方が良い。またヌガー以外にもチョコレートやキャンディー、トフィーなどの菓子類も口腔内停滞性が高いといわれているため、まだ歯の成長が未発達な小児に対しては極力与えず、口にした際にはすぐ歯を磨くことがう蝕予防に効果的である。
今回、調理実習を通して小児から高齢者までを対象にした食事指導や間食指導についても理解を深めることが出来た。患者さんが楽しみながら食事できるような環境を作ることは、直接的にその患者さんに対して的確に指導やアドバイスを行わなくてはならない。口腔内だけに目を向けるのではなく広い視野を持って、患者さん個人の生活背景などにも注目することが重要である。今後、日本はさらに高齢社会が進んでいくため、高齢な患者さんが増加していくと考えられる。年齢を重ねても口腔機能が衰えず、自分の歯で食べ物を噛めるようにするために、保健指導で貢献できる歯科衛生士を目指していきたい。